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”紙の月”見たってよ

みんな大好き『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督の最新作。

紙の月

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映画『紙の月』予告編 - YouTube

監督 吉田大八

原作 角田光代

脚本 早船歌江子

製作総指揮 大角正

キャスト
宮沢りえ池松壮亮大島優子田辺誠一近藤芳正石橋蓮司小林聡美

製作年 2014年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 126分
映倫区分 PG12

あらすじ

バブル崩壊直後の1994年。夫と2人で暮らす主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事に従事し、その丁寧な仕事ぶりで周囲にも評価されていた。一見すると何不自由ない生活を送っているように見えた梨花だが、自分への関心が薄い夫との関係にむなしさを感じていた。そんなある日、年下の大学生・光太と出会った梨花は、光太と過ごすうちに顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりだったが、次第にその行為はエスカレートしていき……。

紙の月 : 作品情報 - 映画.com

原作は未読なのですが、本作は原作をけっこう脚色しているみたいです。

ちなみにネタバレばっちりします。

 

原作では主人公の梨花が海外にいるところから始まり、なぜ梨花がその境遇に陥ったかを遡っていくみたいです。焦点は過去で、学生時代の交友関係や人間関係を掘り下げているみたいです。

しかし、本作では学生時代は大幅に削除して現代の梨花の夫婦生活や職場の人間関係や、光太との関係を掘り下げています。

 

吉田監督の作家性といえば、最後の集約。今まで積み上げてきたものが最後の最後で崩壊するものです。「桐島」の屋上シーンや「府抜けども~」のネタばらし的悪夢にも代表されるカタルシスヽ(・∀・)ノ

本作では、どうなっているのでしょうか・・・

 

よかったところ

・役者陣の演技

宮沢りえさん演じる梨花の色気、池松壮亮さんの演じる光太の絶妙な浪人生感。小林聡美さんのお局てきベテラン職員感。大島優子さんのありがちなOL感。石橋蓮司さんの金持ちのガンコおやじ感。田辺誠一さんのいい夫なのに絶妙な気の利かない感じ。

みなさんが絶妙に実在感があるので、そのなかで起きる横領事件のスリリングさと破滅の道を歩く梨花と、それが露呈していく怖さがヒリヒリしました。

特に光太の最初に会ったときの純朴さが、金遣いが荒くなるとホテルのボーイへの態度の悪さや雰囲気まで変わっていくのがよかったです。

あと女子のロッカールームやトイレなどの本音をさらけ出す感じもよかったです。

 

・部屋の雰囲気や服装

本作では金持ちの家は、金持ちなりの洗練された室内。梨花の家もありがちな子供のいない夫婦の一室。ただ横領がエスカレートすると部屋が荒れ放題になったり、着る服が派手になります。光太も成金のように肩にカーディガンを羽織ったりします。

お金持ちの上品そうなおばあさんも、途中で痴呆症になり玄関の植木が無残に枯れてたり部屋が荒れ放題になったり。説明的ではなく、こういう映像演出はさすがだと思います。

 

・音

梨花が犯罪を犯すとき低音の効いたビートに電子ノイズの入った音が流れます。基本BGMがないので、この音が印象的で緊張感が高まります(`・ω・´)

また梨花の学生時代のクリスチャン系の女子高で歌われる賛美歌「あめのみつかいの」も印象的です。

その前後で行われる梨花の横領という犯罪行為や、不倫がその歌の洗練された合唱の効果か現在の梨花の背徳感が際立ちます。


カトリック聖歌集658番 あめのみつかいの【降誕祭】 - YouTube

 

またエンディングの「Femme Fatal」も今までの修羅の道を歩んで、海外に逃亡した梨花を安らかに送る送別曲になっていました。


The Velvet Underground - Femme Fatale - YouTube

 

ひっかかったところ

・長い

正直長く感じました。梨花の犯罪が次第に明るみに出るヒリヒリ感はよかったのですが、犯罪が露呈してから最後の逃亡までがもっさりしていて、まどろっこしい感じがしました。犯罪が露呈してから、スピード感を持って逃亡までを駆け抜けて欲しかったです。あと10~15分短かったら最高でした。

 

梨花に感情移入できなかった

これは完全に個人的な事情ですが、ちょっと前まで私は同じような仕事をしていました。現在のオンライン化された時代では劇中のような横領は不可能です。不可能とはいえ、梨花の現在の境遇や過去のエピソードを鑑みても犯罪に走るのがやっぱり分かりませんでした。男女間の違いというのもあるかもしれませんが、理解できません。

なので、最後の逃亡もカタルシスを感じることができませんでしたorz

 

石橋蓮司のあからさまなミスリード

最初のいやらしそうな、イヤな金持ちの感じと最後の話の分かるオヤジ像がちょっと作為的な感じが否めませんでした。

 

ダラダラ文句を書き連ねてきましたが、おもしろかったです。吉田監督の役者に対する目線やちょっとした動きの演出も好きなので楽しめました。

しかし、やはり『桐島』のインパクトが強く、どうしても比べてしまいます・・・(´・ω・`)

吉田監督は、今後この桐島の呪縛を断ち切る作品が撮れるのでしょうか?

今後の吉田監督作品を期待する意味でオススメです!

桐島サイコー!!!!

おわり 

 

ちなみに、11月22日のTBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフルの対象作品に選ばれています。お時間のある方は、お聞きの駕しなく!

紙の月 (ハルキ文庫 か 8-2)

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