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映画や漫画に対して、140字では語りつくせない思いをたれ流していきます

"セデック・バレ"見たってよ

凄いものを見てしまった・・・!

いいとか悪いではなくて、凄い映画。これに尽きる。

セデック・バレ


『セデック・バレ』予告編 - YouTube

 

原題:賽克・巴 太陽旗/Warriors of the Rainbow I : Sun Flag

2011/台湾 上映時間 1部:144分 2部:132分

監督・脚本・編集:ウェイ・ダーション

製作:ジョン・ウー、テレンス・チャン、ホァン・ジーミン

撮影:チン・ディンチャン

プロダクションデザイン:種田陽平

美術プロデューサー:赤塚佳仁

音楽:リッキー・ホー

アクション監督:ヤン・ギルヨン、シム・ジェウォン

 

出演:リン・チンタイ、ダーチン、安藤政信、マー・ジーシアン、ビビアン・スー木村祐一、ルオ・メイリン、ランディ・ウェン、河原さぶ、シュー・イーファン、スー・ダー、春田純一、ティエン・ジュン、リン・ユアンジエ、松本実、田中千絵

あらすじ

台湾のセデック族は、誰からも支配されず狩猟や首狩りをして自由にすごしていた。しかし、日清戦争後、進駐してきた日本軍と戦い敗北し捕えられる。その後、警官の監視のもと文明的な生活を強制されるが鬱屈した不満が高まっていた。警官へのリンチ事件をきっかけに他の部族とともに武装蜂起を決意した。それは誇りを取り戻すだけの最初から勝利の見込みのない戦いだった。派出所の警官を襲撃した後、運動会に集まっていた日本人を皆殺しにし山中でのゲリラ戦を仕掛けるが日本軍は、毒ガス、敵対部族の動員などで追い詰め壊滅させた。 

セデック・バレ - Wikipedia

 

この事件は日本史における黒歴史の1つ、霧社事件を題材にした映画です。

恥ずかしながら、この年になるまで霧社事件の存在すら知りませんでした。こうして自国の黒歴史は葬られていくのだなとも実感しました。

この事件に関係するリンク(wikiですが)貼ります

霧社事件 - Wikipedia

セデック族 - Wikipedia

台湾原住民 - Wikipedia

いいとか悪いとか、おもしろいとかつまらないで評価できない映画だと思ったので思ったことを書きたいと思います。

・上映時間

この映画は1部と2部に分かれているのですが、合わせると約4時間40分あります。これだけで普通ではない映画なのが分かると思います。

これはエンターテインメントとして成立させるために削りに削った長さかと思います。濃厚濃密です。

 

・見て感じたこと

冒頭はセデック族の生活様式の説明と、主人公モーナ・ルダオの若いときから現代に至るまでを垣間見ます。この冒頭の日本軍に統治されるまでを見ると”アポカリプト”の本編を見てその後日談も一気に見ているような気さえします。


Apocalypto [ Trailer 2006 ] [ ENG ] - 1080p - YouTube

 

終盤の凄まじさ

1部終盤に霧社事件の再現がされるんですが

凄惨・・・の一言に尽きます。

映画的な分かりやすさのためだと思うのですが、人の頭ってそんなに簡単に飛ぶの?というくらい首が狩られていきます。彼らはそれを「血の儀式」と呼び、近代人の死生観とまるで違います。

血の儀式で首を狩られたものは生贄になり、血の儀式を行った者は死ぬと虹の橋を渡り永遠の狩場に辿り着けるという話。

狩猟民族は狩場を大切にし、他の社(村)の者と狩場を巡って度々争いも起きます。争いが起きると出草と呼ばれる首狩を行います。男性は出草を通過儀礼とし、出草をすると顔に刺青をいれます。成人の証です。

旧日本軍は、彼らの文化を野蛮として禁止し文明を与えるという大儀をもって近代化を推し進めました。セデック族の文化は世界と比べ未成熟かもしれませんが、その近代化には敬意がなく抑圧のストレスから起きた事件でもありました。

彼らを理解した日本人もいたし、映画で表現した以上にヒドイ日本人もいたらしいです。

また日本人以上に勉強し、近代文化を手に入れようとしたセデック族もいました。そんな優秀なセデック族は2人いましたが、兄弟でもないのに「花岡一郎」「花岡二郎」という日本名を与えられます。そこにも当時の日本人の敬意のなさが垣間見えます。

 

2部は近代兵器を持って応戦する旧日本軍と、山を知り尽くしたセデック族の山岳戦法を駆使した戦争映画となってました。戦争風景と山の木々の美しさが何ともいえません。

セデック族は近代兵器に徐々に戦力を奪われていきますが、『誇り』のための戦いなので戦をやめません。女性や子供は足手まといになるといい自決します。

キャスティングも凄くて、全員実在感があり鬼気迫る演技に圧倒されます。

特攻的にセデック族が大人数で攻めるシーンは圧巻。

 

そして、これはセデック族の立場のみに立って描かれるような反日映画とか言われるような政治目的の映画ではないことは見れば分かります。

日本側の中心人物で冷酷非情とも言われる小島巡査に同情の余地が残してあったり、日本兵が亡くなるときも妙に叙情的な演出がしてあったり。

この映画はモーナ・ルダオの大河ドラマです。

こういう争いは人種とか種族の理解不足だったり思いやりのなさで起きてしまいます。しかし詰まる所ヒト対ヒトだとつくづく思います。

いいヒトもいれば悪いヒトもいる。

本当の暴力は殴ったり傷つけたりするのではなく、他者を敬わないこと。尊厳を傷つけることだと思いました。

 

セデック族と日本人の間で葛藤する花岡姓を持つ二人の最期は、見ているこちらの心が裂かれる思いでした。

 

ぜひ1度は見ることをおすすめします。

ただ次々と人が無残に殺されていくショッキングな映像が続くので、心臓の弱い方にはおすすめしません。

凄い映画だった。

おわり